2008年01月13日

速記講座【60】 「漢詩はいかが?」


速記講座【60】 「漢詩はいかが?」

 日本語形成の重要な要素として、あるいはまた日本人の心に深く影響を与えたものとして漢詩が上げられます。精神的よりどころとして、あるいは知識・教養の一つとして、文学作品の中にもたくさん出てきますね。平安朝の昔から、日本の芸術や文化にも大きくかかわってまいりました。
 あの「枕冊子」でも、雪の降った朝、清少納言と中宮定子との漢詩を踏まえてのやりとりが出ていますね。
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 雪のいと高う降りたるを、例ならずして御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言よ、香炉峯の雪いかならん」と仰せらるれば、御格子あげさせて、御簾を高くあげたれば、わらはせ給ふ。
 人々も、「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。なほ、此の宮の人には、さべきなめり」といふ。 
  〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
 雪がたくさん降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をおろしたままで、炭びつに火をおこして、女房たちが話をしながら、中宮様の御前に集まっていると、「少納言よ。香炉峯の雪景色はどうであろうか。」と仰せられたので、御格子を上げさせて、御簾を高々と上げたところ、中宮様はにっこりとなさった。
 その場の人たちは、「私たちも、漢詩にもなっている、そういう故事は知っており、よく歌ったりしているが、とっさには思いもよらなかった。やはりこの宮中でお仕えしている者は、そうあるべきなんでしょうね。」と言った。
  〔枕を欹て……寝たままの姿勢で枕を高く傾け〕
  〔簾を撥げ……すだれを強くはね上げ〕

 香炉峯下、新卜山居  香炉峯下、新たに山居を卜し
 草堂初成、倡題東壁  草堂初めて成り、偶々東壁に題す
             白楽天(唐)
日高睡足猶慵起    日高く睡り足りて 猶ほ起くるに慵し
小閣重衾不怕寒    小閣に衾を重ねて 寒を怕れず
遺愛寺鐘欹枕聴    遺愛寺の鐘は 枕を欹てて聴き
香炉峯雪撥簾看    香炉峯の雪は 簾を撥げて看る
匡廬便是逃名地    匡廬は便ち是れ 名を逃がるる地
司馬仍爲送老官    司馬は仍ほ 老いを送る官たり
心泰身寧是帰処    心泰く身寧きは 是れ帰する処
故郷何独在長安    故郷何ぞ独り長安に在るのみや

60-1.JPG
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「春暁」         孟浩然(唐)
春眠不覚暁      春眠 暁を覚えず
処処聞啼鳥      処処 啼鳥を聞く
夜来風雨声      夜来 風雨の声
花落知多少      花落つること 知る多少

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「絶句」         杜甫(唐)
江碧鳥逾白      江 碧にして 鳥 逾々白く
山青花欲然      山 青くして 花 然えんと欲す
今春看又過      今春 看々又過ぐ
何日是帰年      何れの日か是れ帰年ならん
posted by sss at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 速記講座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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